咀嚼訓練と頸椎可動域の関連について


川村秋夫  
akio kawamura

   
 顎関節症の随伴症状と言われる不定愁訴の咬合関連症は、頸部筋群と咀嚼筋の圧痛の関連性及び頸部の可動域と関連が深いことが臨床上示唆されている。全歯牙接触型スタビリゼーション
splintにて何度もていねいに調整し、極小タッピングが収束し、左右臼歯部の均等接触し、前歯部が弱く接触し、アンテリアガイダンスを修正し時間を於いてもタッピングが収束し安定してくると、咀嚼筋と頸部筋の圧痛が減少するだけでなく、膝の裏(委中)の圧痛も軽減している患者さんが多数見受けられる。

splint_up01

 スプリントで咀嚼筋と頸部筋の圧痛が減少すると、首の可動域が拡大していることが多い。右で咀嚼すると、右に首が倒れやすくなり、捻転がしやすくなることが多く、左に行きにくくなったと感じる。また左で噛むと左に傾斜しやすく捻転しやすくなる。首を動かし可動域が少し不快な位置を捜して(曲げて捻った位置二軸、三軸)、両側で咀嚼訓練を強くすると、首を動かしたときの不快症状が軽減し、より可動域が拡大していることが多い。スプリントを装着しただけでは、首の痛みが軽減しにくいとき、弾性チューブを用いた咀嚼訓練(不快な首の位置)は、即効性の可動域を拡大し不快症状を軽減できる安全な頸椎可動域調整方法であり、家庭で行えるため臨床応用が高いと思われる。下顎の偏位側に首を曲げたままでの偏咀嚼は、首の可動域をより変化させ、悪化さにせることが示唆され、首を真っ直ぐにして、偏咀嚼がないように全体的に咀嚼することは、首の可動域を適切に拡大し、症状の軽減に繋がる可能性が高いと思われる。また咀嚼訓練により首の可動域が拡大すると、同時に立位体前屈や後屈の腰の可動域も拡大していることが多いのは 臨床上の事実であるがほとんど知られていない。

 下顎位の誘導法は、術者誘導のチンポイント変法、バイラテラル法などもあるが 私が推奨するのは、患者自身のEMGバイオフィ
ドバックの極小タッピングを重視し、スプリントやアンテリア・ジク(前歯型スプリント)にて極小タッピングが収束し安定するまで調整を繰り返した後、外しての咬合診断を行っている。時間とともに変化することも多々あり、顎関節症の多様な症状と上下の接触点とタッピング状態が収束し安定しているか時に数週間数ヶ月の経過観察が必要になる。タッピング時に、筋電図を利用するのも有効であるが咬筋を触診すると微妙な左右の筋の活動性が触知でき、患者さんの接触状態を感覚的に共有できることが多い。

 また家庭療法として咬み合わせの自己診断方法を積極的に推奨している。方法は、顎のストレッチング後に、口角を左右に軽く伸展しての極小タッピング方法と上下の口唇を付けたままでの、極小タッピングの時の左右前後の接触状態とタッピング音の差である。タッピング時は、左右前後の接触音の差を感じ取って欲しいのである。時間を於いても変化しないか、スプリントは均等に接触しているか自己診断を大切にしている。 

 スプリントは、可撤式が原則である。早期接触
(first contact)が上下とも天然歯のとき、補綴物の中心窩が接触せず低位であるときは、スプリントを外したギャップを修正するため補綴物やインレーの上に、接着性レジンを貼り付けたダイレクト・スプリントを行い、大臼歯の中心窩を接触させアンテリアガイダンスを修正し、タッピングのより安定の後に、治療冠に置き換えての咬み合わせの治療を行っている。足すか、足しながら削るか、削るかを過去の治療経過と口腔内から得られる歯科治療の経過情報、咬合平面などを考慮し診断を要する。

 歯科医師が行える頸椎脊椎の簡易な調整による関節可動域の拡大方法とスプリント調整、ダイレクト・スプリント療法の症例を解説し紹介する。




 
紹介された顎関節症患者のその後について
  
宮城県 仙台市  川村秋夫  
kamiawase@gmail.com
http://plaza.rakuten.co.jp/neckpains/12000

顎関節症のスプリントやかみ合わせのリハビリ治療に取り組んで20年以上になるが,顎関節症の患者は,多数の診療所や病院から紹介もしくは患者自身で転院してくる事が多々ある.患者が治療内容や方法,保険の治療制限にご理解いだけなかった場合や,歯科医師との理解と納得と選択が合わない場合である.顎関節症の診断と治療についても,スプリントを中心にした咬合からアプローチした方がよいのか,理学療法や運動療法を中心にした方がよいか多々議論がある.今回,他院からの成人矯正の後の咬合不安定症候群,大学病院の顎関節症外来で数年間治療していた症例を中心に,開口障害を伴わない咬合不安を訴える顎関節症を考察してみる.


2006  発表  抄録


他院から紹介された顎関節症患者のその後について  

  仙台市
川村秋夫

近年感染症であるう蝕と歯周病は,保険制度もなんとか変遷しながらも,
8020運動とともに治療やオーラルケアがなされてきている.しかし,第三の歯科疾患としての顎関節症と噛み合わせのリハビリ治療は,臨床上,未だに見逃されて積極的に行われていないのが現実だと思われる.昨年も,この学術発表会で顎関節症の治療報告してきた.顎関節症のスプリントやかみ合わせのリハビリ治療に取り組んで20年以上になり,多くの反省を含めて症例を検討をしている.顎関節症の患者は,多数の診療所や病院から紹介もしくは患者自身で転院してくる事が多々ある.患者が治療内容や方法,保険の治療制限制度にご理解いだけなかった場合や,歯科医師との説明に納得と選択が合わない場合でもある.顎関節症の診断と治療についても,スプリントを中心にした咬合からアプローチした方がよいのか,理学療法や運動療法,薬物や心理療法を中心にした方がよいか多々議論がある.今回,他院から紹介で多額の費用を要した成人矯正の後にも,咬合が不安定であり,心理療法も受けていた顎関節症の症例を数年間にわたり治療し,症状が安定してきた症例を報告した.

ある患者さんに言われた内容の一部
/ 矯正治療と前医への不満の内容
 咬み合わせの検査と診断と治療は,遅れていて医療になっていないのではないか.前医では,食いしばるために起こると言われ,食いしばらないようにと言う暗示療法と マウスピースのようなソフトスプリントを使用していたが,症状の緩解には,ほとんど効果がなかったこと.暗示療法を勧めていたのは,診断と治療方針が結果としては,医師により診断が大きく異なることが不満である.矯正歯科治療は,始めに効果があるかどうか分からないと言われたが,やはり自分の症状の軽減には,効果がなかったこと.矯正とは,美容の仲間で,医療には なってないのですか.私の場合,矯正への多額の時間と費用は,症状を緩解する医療としての経済効果が少なったと思う.咬み合わせの検査と診断と治療は,遅れていて医療になっていないと思う.


咬合診断における天然歯を削合する咬合調整の注意点
 多くの顎関節症や咬合不安定症候群の所見は,極小タッピングが不安定であり咬合接触点不足していることが多く,また犬歯や小臼歯部の側方ガイドが欠如している事もある.そのため,極小のタッピングが不安定である.咬合からのリハビリ治療は,咬合接触点を均等に増加させてタッピングを安定させることであり,咬筋の筋電図での活動性が,極小のタッピングでも,しっかりとした咬合接触を与えることにより筋活動することである.また犬歯部の側方接触を軽度に増加させる必要がある.第一段階は,安易に咬合調整しないで,シミュレーションとしてのスプリントである.その後,第二段階として,安定したスプリントをはずした後の咬合診断を行い,少し長時間装着していられるミニ・スプリントや接着性スプリントを行って,咬合接触の増加と安定を確かめている.決して 天然歯を削合する咬合調整は,歯周病でない限りは,積極的におこなうべきでないと考えている.天然歯の削合である咬合調整は,今までの多くの症例と経験から第一選択肢としては疑問が残る.咬合調整は,後に戻らない治療であり,かえって接触点が不足し不安定になることがあり,第一選択肢としては,避けるべきこともある.先に低位の部位に接着性レジンなどによる咬合接触の増加を考慮すべきである.

極小タッピングの誘導の患者さん自身による咬合診断の工夫 
(患者さんへの資料1)

ニコッと笑って 咬み合わせを調べてみよう/ 咬み合わせの自己診断チェック 
 上の歯と下の歯の接触状態は
,「咬み合わせ(咬合)」と言われ,食物の噛み安さ,アゴの関節やあご,首の筋肉のバランスにとても大切です.歯の治療をして歯に冠や詰め物をし,時間がたった方や顎関節症の方は,変化しわかりにくくなってしまいます.患者さん自身で調べるコツを覚えていただき,家庭で自己チェックしてください.
できるだけ 速くかなり弱く小さく,カチカチ、パパパと弱く速く噛んだ時の 咬み合わせ状態を調べたいです.(EMGバイオフィドバックの咬合診断と言います)
咬み合わせの不安定な方,口が真っ直ぐ開きにくい方,アゴの関節から音がする方は,痛みがでない程度,顎の体操,アゴのストレッチングを十分に良くしてみてから,咬み合わせの自己診断をしますとより分かりやすいです. スプリントの調整にも,スプリントをはずした後の,噛み合わせの診断にも,大切です.
***** 咬み合わせの自己診断   *******  

1. 速く弱く上下の歯を合わせると歯が接触するカチカチ,パパパと音がします.
アィーンと口を横に強くいストレッチングを5-7秒ぐらいした後,アゴのクセを減らした後に
軽くスマイルして カチカチと歯を合わせると音が右か左のどちらからしますか
? (, 左  両方 )
カチカチ パパパパと噛んでるとき 頬を触ると 筋肉のしっかりとした動きが分かりますか 

2.上下の唇を締めてモほほモに空気を入れて ふくらませて (魚のフグのようにほほを膨らませて)
速く小さく カチカチと上下の歯を軽く 合わせてみてください 均等に接触しますか 
どこが 先に接触しますか    
( ,  左  両方 )
歯と歯が触った位置で 止めてから  ゆっくりと 咬み込むと ズルッとずれませんか   
少し 空気の量を減らしたときは 位置が変化しますか
   ( 変わる  変わらない )

3 天井を見上げるようにしたアゴを上げた姿勢で,速く小さく カチカチと上下の歯を軽く 合わせてみてください   右か左のどちらが先に接触していますか ?  ( ,  左  両方 )
また少し下を向いてご飯を食べるような姿勢は,奥歯より前歯がしっかり接触しますか
4, 頭を右かまたは左に傾けたままで,速く小さく カチカチと上下の歯を軽く 合わせてみてください.  
 右か左の 片側が 強く  接触する感じがしますか 
?  ( ,  左  両側 )
5. 今度は,まっすぐ向いて,ニコッとしないで,口と顔の力を抜いた時( 無表情の能面の顔で),上下の唇を付けて、まだ歯と歯は接触させないで、一息ついてから、ゆっくりと軽く触るように上下の歯を合わせてください。左右の歯の接触に違いがあるかを見てください. 時間差がありますか 
( ,  左  両方 )
6.左右前後に 歯をすり合わせるように,アゴを動かしてみてください
前に少しずらすと 前の歯が接触しますか
右左に少しずらししたときに 犬歯付近で 滑らかにこすれますか   食べ物を食べたとき 前歯で 犬歯付近で ちぎれますか

第一段階の治療としてのスプリントの
2つの目的について(患者さんへの資料2)
スプリントとは,より楽な安定する咬み合わせの位置をさがし、アゴのバランスを修正するプラスチックの装置です 咬み合わせのバランスが良くないことが主な原因と考えられる患者さんに,より安定する咬み合わせを段階的に作り,補整する咬み合わせのスプリント治療が,咬み合わせのリハビリの第一段階の治療です.弱く,速く小さく噛んだとき 左右均等に接触し,上下の歯が多くの点で接触し,噛んだときに安定感が増加して欲しいのです.弱く,速く小さく噛んだとき接触点が少ないと,強くガチガチと噛んだときや噛みしめたときなどに,アゴがズレたり,ネジレたりして強く接触すると,関節や筋肉に無理な歪みがで,時に症状が出やすくなります.
スプリント
(安定型/スタビライゼーションスプリント)には,2つの目的があります.
1.噛み合わせ安定装置し,症状軽減のため
 噛みしめるときの力や飲み込むときの噛む力を分散させて,症状を軽減させるためです
 上下の歯の接触点を多くして,噛む力を分散させ,筋肉が均等に使いやすく,かみしめやすくなるように, 関節円板の変形には 少し 時間がかかります. 関節の骨の変形の方は,調整がうまくいって安定するのに回数と時間がかかります.
2. 噛み合わせのクセ取りリセット装置 / 噛み合わせの検査用 
 安定している装置を
5分ぐらい入れた後に,はずした直後に,自分の歯がどの様に接触しているか,よりはっきりと分かるのです.噛み合わせの検査のための装置,自己診断もし易くなります.長く入れてられない方もいます.数分入れた後の,咬み合わせ検査用としての目的で使用します.スプリントを入らなくなるようする咬み合わせのリハビリ治療としての第二,三段階(希望者の方)の途中にも,スプリントを使いながら,調整していくとかなり時間の短縮になり,患者さん自身の自己診断にも本当に有効です.

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スプリントを入れて数回調整かる,目的通りに症状が速く軽減する方と,残念ながら 筋肉の噛みクセが強く関節の変形が大きいと,すぐには効果が出にくく変化が少ない方に分かれます.

スプリント
(安定型)を入れたが効果が出にくい時
1. スプリント(安定型)装置を使用する時間が,短くありませんか
  長く入れてみてください 日中も夜間も できるだけ 口の中に長く入れてみてください
  発音しにくく 
_の粘膜や舌を噛みやすいかもしれません
日中ならば 車の運転中や 体操をするとき お風呂にはいるとき 新聞や本を読むとき                 
   パソコンをするとき テレビを観ているときなど  夜間の就寝中
  大きいため,発音しにくく,長く入れてられるように,ミニ・スプリントを製作してみますか
  ただし,プラスチックで作るミニ・スプリントは,破折し易いことがあります.
2.スプリント(安定型)装置が安定していますか.時間がたつと 少し変化して不安定になってませんか
  確かめてみてください  弱く 速く小さく噛んだとき 左右均等に接触し,安定感がありますか
  スプリントは 実は,一回の調整でだけで 安定する方は,
50-60%です. 今までのクセが強いと
調整に数回かかります.必ず毎回確認し調整しますから ご持参してください.時に,第二段階の接着させるダイレクト・スプリントも併用します.時間が経過すると 数日で 筋肉が学習して敏感になり 以前より安定感を求めてきます.するとスプリントが 少し不安定に感じてきます.均等に感じなくなって来ることがあります.アゴのクセ採り体操,ストレッチングを勧めます.前後左右に 一方向 
5-7秒ぐらいゆっくりと 気持ちよく伸ばしてください. アイーンと気持ちよく伸ばしてください.左右均等に 15回ずつゆっくりと 交互に咬んでみてください.その後,噛み合わせを 再度調べます.


第二段階の咬合治療 スプリントを外す試みのリハビリ咬合治療の難しさ
 スプリントの効果が安定しそれなりに効果を発揮した後スプリントをどう外していくか.ここが問題である.スプリントの接触点が安定するとスプリントを外すと,かみ合わせの接触点が少なく感じ,顎の不安定感が増すことが多い.咬合調整で歯を削るか,接触の弱い甘い部位に接触点を足すかの検査診断がとても大切である.原則的に早期接触が,人工物の時は咬合調整をし,天然歯の時は,添加を行っている.添加する時は,始めから冠をすぐに再製作するのではなく,治療冠として接着性レジンのダイレクト・スプリントを用いている.この治療には,患者さんの満足度も関係し,現在でも健康保険での制限があり,大変時間がかかり大変な苦労する.
 また,時間経過と共に咬合位が変化していく時にどう対応するか.クラウンを仮着し, 数ヶ月時間をおいてプレスケールや極小タッピングでのシリコン.チェックバイト,咬合紙光透過法で咬合接触を検査記録し,時に低位の部位には,
14Kを鑞着したりする.または時にクラウンの咬合面に接着性レジンのダイレクト・スプリントをもちいて咬合挙上する.またクラウンの再製作も時にある.時に難問難関で困り果てることがある.どこまで咬合接触状態を回復するか.患者の感覚も大切であるが,客観的な評価も必要である.無論健康保険だけでは,カバー仕切れていない.患者さんからも,ご不満なところとなる.
 噛み合わせを治療すると,重度の頸部痛や腰痛も軽減する事が多いが,歯科医師としての咬合診断が必要である.噛み合わせが良くないと,頸部痛や腰痛と関係している人がいるが,腰痛イコールかみ合わせではない.インブラントや矯正治療も大切であるが,歯科医師として,原点に返って感染症ではない力学的なバランスの咬合のリハビリ治療が,どこまで患者さんに寄与できるか,歯科医療をより今まで以上に考えて行いたい.
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日本顎関節症リハビリ研究室 in 仙台
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